マタリの取扱い説明書

「マタリ」とは僕のこと。マタリは仏門に入り、WEBの世界に入り、東京の道路を走っています。

人生初のデモ隊に参加。決起大会は日比谷公会堂

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photo by CharlesFred

 

今日、人生で初のデモ隊に参加してきた

日本の片隅でひっそりと暮らしていた僕にはデモ隊なんてテレビのニュースの中の存在であった。そして、それは何か過激な思想を持った人たちが、火炎瓶なんかを振りかざしながらシュプレヒコールをしているイメージ。(と言ったら言いすぎかもしれないが)

ところがである。霞ヶ関あたりにタクシーを走らせていると春になるとしばしばデモ隊に出会う。各業界の労働組合日比谷公会堂で決起大会を行い、デモ隊を編成し、国会通りを、経産省財務省の前を、そして総理官邸前を通過し、国会裏にて衆議院議員参議院議員に署名嘆願をするのだ。

以前に「デモの行列なんて、昔はよく労働組合でやってたけど、今は単なるパフォーマンスだよ」と言っていた人を思い出した。ところが、僕が参加したデモというのは、業界の健全性と労働者の地位、そして利用者の立場を考えた至極全うな要請のように感じた。

労働組合の決起大会・デモを通して、新鮮に感じた3つのこと

まず、タクシー業界の規制緩和労働組合が反対している構図を知っておこう。
小泉政権以降にタクシー規制緩和が行われ、街を走るタクシーの台数が増え、タクシー運転手一人当たりの売上が減り、給料が減っている。また、低価格競争が行われるようになると、その負担はタクシー運転手の給料に跳ね返り、全うな労働環境ではなくなっていく。その結果、公共交通機関の一つであるタクシーの運転手とその利用者の、人命の安全が脅かされかねない。現政権も規制緩和路線であり、野党の民主党はじめ社会党規制緩和反対として対立する。

1.身近に感じさせる国会議員のスピーチの秘密

 決起大会では、登壇した3人の国会議員がいた。規制緩和に反対し、タクシー労働組合と手を組んで法案を通そうとする国会議員たちだった。その3名は、辻元清美衆議院議員桜井充参議院議員、それと社民党の党首だったか?3人目を覚えられなかったのには理由があった。
やはり、国会議員の武器は話術だけあって、それまでの労働組合のお偉いさんたちより、話がうまいなぁと思ったのだけど、最初の二人と社民党党首では印象が全く違った。

辻元議員が語ったストーリーはこんなの

ある年配の女性の息子さんが、夜中に交通事故で病院に運ばれたときのこと。
深夜なのでバスも電車もなく、車も運転できなかった。気が動転していたその女性は、とりあえずタクシーを呼び、病院に駆けつけようとしたが、急なことで手持ちのお金もなかった。途中コンビニによってもらうことでATMでお金をおろすことができた。また、息子の安否を心配し落ち込んでいる中、運転手に励まされながら、なんとか病院に向かうことができた。そして、息子さんが一命を取り留めた後も、家までその女性はタクシーで送ってもらった。その女性はタクシーの運転手にたいそう感謝していたそうだ。「タクシーって、いざというとき本当に頼りになります!」と語った。

桜井議員のストーリーはこう

私は小泉政権時に規制緩和に賛成してしまったことを後悔している。地元仙台で、タクシーに乗ったとき、運転手に景気はどうか聞いたら、「以前は月30万くらいだったが、今では12万だ」と聞いた。今はそこまでひどくはないが、仙台の街には空車のタクシーの列が2重、3重にもなり、交通渋滞を引き起こすほど。その時、私は真剣にタクシー運転者の労働問題に真剣に向き合おうと思った。


議員さんたちなので、表現豊かに、聴衆であるタクシー運転手たちに届くように話をしていた。聞いている僕は、「あぁ、この議員さんたちは、本当に労働者のことを考えてくれているんだな」と思ってしまったのは言うまでもない。

ところが、しかし、3人目の社民党党首の話というのが、ひどいものだった。キャッチフレーズというのか、とりあえず、「規制緩和反対!一緒に戦います!」的なワードを興奮して連呼しているイメージしか残っていなかった。あぁ、ググッたら党首は吉田という人らしい。

ただ単に感情的に語気を強くして声を荒げて言葉を発するだけでは、相手の心の琴線に触れることはできない。ストーリーを語ることで人の心を動かすことができるということを国会議員さんたちから学べた決起大会であったのだ。

 やっぱり、ストーリーを語れってことだ!

ストーリーで体験を語れば人の心を動かせる

ストーリーで体験を語れば人の心を動かせる

 

2.規制緩和が業界当事者にどう影響しているか

これは、誰が言っていたか忘れたが、たしか議員さんの誰かだったと思う。
規制緩和の狙いは、自由競争を促すこと。しかし、自由競争によって果たして国民は幸せになったのだろうか?また、業界の規制は既得権益を守ることではなく、タクシー運転者の労働環境を守ること。いやそれよりも、むしろ利用者が安心安全にタクシーを利用できるために必要であると説いていた。

僕にはなかった考え方だった。単純に、規制は既得権益を生み、利用者である国民に不利に働くという理解をしていた。しかし、タクシー業界では規制があることで、タクシー運転手の労働環境が守られ、利用者の利便性・安全性が確保されるというのは一理あると思った。

もちろん、これらは労働組合側の都合であって、全面的に正しいとはいえないのかもしれない。タクシー料金が高いと感じている人も少なくないし、UBERのようなイノベーションは素晴らしいのかもしれないからだ。

3.国会で決まりかけの法案を骨抜きにするのは

こんな話もあった。「国会で決まりかけていた新たな法案に横槍をいれ、法案を骨抜きにしたのは、「規制改革会議」だ。」というものだ。規制改革会議の関係者にはタクシーの車体リースを受け持つオリックスの会長や、タクシーメーター機器の会社関係者もいるとのこと。つまり、これらの関係者には、タクシーの台数が増えれば増えるほど、懐が潤うという話だった。規制緩和が本当に当事者であるタクシー運転者や利用者である国民に向けて行われいるとはいえない現状を聞いた。

 まとめ

 さて、長くなってしまったので、まとめに入らねばならない。まず、僕自身、政治というものに関心こそあれ、政治の場で戦っているところを直に触れることは人生でなかったので、とても新鮮であった。(事件は現場で起きてるんだなぁ。)と同時に、時代の大きな流れに屈せず、それぞれの理想を大儀とし、または弱者や労働者を守るために立ち上がっている国会議員が本当にいることを知った。

立場の違う人間のそれぞれの都合がぶつかり合って、世の中は動いている。どちらが正しいなんて言えるものは何一つない。それがこの娑婆世界。だから、よりよい世の中を目指す政治にしたって、これで完璧といえる法案もなければ、規制緩和もない。

願わくば、より多くの人が幸せになれる答えを導き出すシステムが政治であってほしい。